また、『風立ちぬ』は、1回ではなく2回見て「確かめたい」と思わせる要素がたくさん
ある。
本作で斬新なのは、人間の声などで効果音を作っている点だ。実は、宮崎監督はジブリ
美術館で上映された短編アニメ「やどさがし」で同じ試みをしているが、長編映画で使
うのは初となった。
飛行機のプロペラ音から蒸気機関車の蒸気やエンジン音、関東大震災の地響きの音まで、
こだわり抜いて録音されている。実際、1度見ただけでは、物語に集中していて、細部の
音にまで気が行き届かないので、今度は耳をそばだてて聞いてみたくなる。音以外でも、
関東大震災で人が逃げ惑うシーンなど、群衆の画では細部の人間ひとりひとりが丁寧に
描かれていて、それらももう一度、じっくりと見てみたくなる。
当初は“大人ジブリ”と言われる作風のため、小さな子供のいるファミリー層の集客が
心配されたが、その分、普段アニメ作品を見ない高齢者層の心を鷲づかみし、平日の動
員も好調だ。レビューの評価は全般的に高く、MovieWalkerの見てよかったランキング
でも2週連続1位に君臨している。
このまま行けば、宮崎監督は、アニメ映画の歴代ランキングの順位をまた自ら更新しそ
うである。現在の歴代1位が『千と千尋の神隠し』(01)の304億円、2位が『ハウルの動く
城』(04)の196億円、『崖の上のポニョ』(08)の155億円で、この上位3位に食い込む可能
性も。
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